2009年04月01日

台風による木造の建築物の災害防止について[昭和26年発住第60号]

  昭和26年11月15日
建設事務次官から各都道府県知事宛

 去る10月のルース台風により多数の木造の建築物が被害をうけたので、その災害復旧については、目下それぞれ措置を講じているが、台風は毎年襲来しその都度同じような災害を繰返していることは誠に寒心に堪えないものがある。
 これが対策として建築物自体においても被害を未然に防止し、或は損害を僅少に止めることを図ることが最も必要なことと考えられる。

 今回のルース台風による建築物の被害状況を見ると、建築されてから年数年を経た腐朽度の大きいもののみに限らず、終戦後に建築された比較的新しいものが多数あり、それ等のうちには設計が建築基準法令の規定に適合し、且つ、設計の通り施工されていたならば、被害をうけなかつたと推定されるものが相当多いように見受けられた。
 従つて、今後建築基準法の施行にあたつては建築計画の防災的指導と共に特に現場における中間検査を励行し、法令の規定の厳守に努められたい。
 又、台風来襲の頻度が大で、しかも建築物が強い風圧力をうける地方においては、現行法令による構造規定では耐力上不充分と認められる場合もあるので、その際は法第40条の規定に基き条例による制限を附加する等、別紙の風災防止指導要領に基き、木造の建築物の災害防止に関する指導監督をせられるよう御願いする。

 なお、学校、病院、公庁舎等の既存の公共用或は多数の人の使用に供する木造の建築物について随時検査を行い、耐風のみならず耐震的にも構造上又は腐朽等に基く耐力上の欠陥を有し、緊急に補修を必要とすると認めたものについてはこの際、至急に補修、改造を実施せしめられるように努められたい。
別紙
木造建築物の風災防止指導要領
(建設省住宅局)
 台風、高潮等に対する防災対策として、木造建築物は、できる限り「剛」にすると共に建築物の移動及び変形を防止するため、堅固な基礎に緊結すべきである。即ち、建築物を剛にするには、軸組、床組、小屋組、壁体、床等の構造部材を大きくして、これ等を相互に緊結し、且つ、水平力に耐えるため、できるだけ多くの斜材等を有効に設けると共に壁仕上げ、床仕上げ等をも利用することが肝要である。
 これは今回の台風に際し、外壁をラスモルタル塗りにした木造建築物(軸組が腐蝕しているものを除く。)は、比較的被害が少なかつたこと及び比較的大な部材を使用した建築物でも、要所に筋かい又は火打その他の水平斜材を欠いたため、その建築物が撓んだり、捩れたりしていることから考えても明らかなことである。
 建築物を風に対して「剛」な構造とするためには、建築物の計画自体を、なるべく凹凸を少なくすこと及び軸組仕上げ等について建築物の剛度を高めるように計画することが必要であつて、特に左に掲げるように構造部分に対しては、充分な技術的注意をはらう必要がある。

一 土台、柱、はり、けた、小屋ばり等の主要な構造部材の相互間における仕口はできるだけ金物を用いて緊結すること。(柱とけた等の仕口は長柄込栓でもよいのであるが実際に見受けられる施工は不完全であるから、緊結金物を常用せしめた方が信頼できる。)

二 柱、はりの仕口等で部材に欠き込がある部分は補強金物で補強すること。

三 筋かい、火打等の斜材の各仕口は、その部分で引張り力又は圧縮力によつて離れないように、かすがい、ボルト、羽子板ボルト、短冊金物、その他の金物によつて緊結すること。(貫筋かいを釘によつて取り付ける場合には、引張り力によつて釘が抜け出さないようにすること。)

四 通常最も多く使用される貫筋かいの類は、一方向の引張り力にしか耐えられないから、貫筋かいの類を取り付ける場合には、これと反対方向の力にも耐えることができる別の貫筋かいの類を同一軸組面に配置すること。

五 主要な貫筋かいは、水平力に有効に耐えさせるため、筋かいと土台又はけた(はり)との角度が60度をこえないように取り付けること。

六 止むを得ず構造耐力上有効な筋かい又は方ずえが設けられない場合には、水平力に耐える控柱又は控壁を設けること。(屋外の控柱等について、防腐方法を構ずること。)

七 柱と方ずえとの仕口は、この部分で柱が折れるおそれがあるので、添柱等により補強すること。

八 小屋ばり組には、隅角その他主要の個所に火打材を使用し、特に大きな小屋ばり組にそのほかに水平筋かいを設けること。

九 鉄板、スレート等の軽量な屋根のたる木は、長い釘で充分に母屋に止め、屋根がたる木ごと飛ばされないようにすること。特に軒先の出が長い場合は、たる木を軒けたに手違かすがいを用いて緊結すること。

十 ラスモルタル塗、木ずりしつくい塗等の大壁又は厚い下見坂の壁は筋かいと同様に水平力に対して有効である。特に木ずり又は下地板を軸組の内外に斜めに張つたものは、更に有効であるから之を活用すること。

十一 屋根瓦特に棟瓦は、銅釘又は銅線を用いて数ケ所で緊結するものとし、且つ、棟瓦、のし瓦、けらば瓦、軒先瓦等の下部の間隙に風が吹き込まぬように雨戸しつくいをつめること。

十二 台風の頻度が大なる区域については、現行法令の規定では不充分で、法第40条の規定に基き制限を付加する必要があるが、この際には左の事項について考慮することが望ましい。

(1) 令第42条第2項の規定は、地震に重きを置いて定められたものであつて、風に耐えるためには、土台は基礎に緊結すべきである。

(2) 令第46条の規定によつて必要な軸組の長さは、地震の水平震度が0.1程度を想定して規定されたものであるから、強い風圧力に耐えるようにするため少くとも同条が規定する長さの1.5倍以上にすべきである。

(3) 棟瓦及びのし瓦は台風の際に特に飛びやすいので、できるだけ1枚毎に銅線で緊結すべきである。更に台風予報のあつた場合には、ラジオ、新聞等を利用して、防災のため左の如き措置をとることを勧奨する必要がある。
1 風の方向は変化するから、どの方向からの風に対しても耐えうるような措置を講ずること。
2 被害が大となるから、風が直接屋内に吹き込まないようにすること。
3 軽い屋根は、飛ばされるおそれがあるから、木材、角石等で押えをすること。
4 丸太角材等でつつかいをし、又は貫材等で仮筋かいをすること。
5 外部の建具が飛ばされないように敷鴨居又は建具どうしを釘等で連結し、或は建具の内側にタンス、畳等を置いてささえること。

 以上の外風災害防止の措置をとるために参考となる主な文献としては左記等を参照せられたい。
(1) 佐野利器・武藤 清・・・家屋耐震並耐風構造 高等建築学第26巻
(2) 田辺平学・・・・・・・・耐震建築問答(附耐風、耐火、防空)
(3) 大阪府編・・・・・・・・大阪風水害(昭和9年)誌
(4) 建築技術研究会編・・・・建築の防災
(5) 亀井 勇・・・・・・・・これらの耐風設計要領 建築技術第3、6、8巻
(6) 狩野春一・神谷六美・・・風水害より見たる木造構造物に関する2、3の考察 建築雑誌昭和10年1月
(7) 十代田三郎・・・・・・・建築物の環境、配置並に形態と風害(主として大阪市小学校において) 同右 昭和10年2月
(8) 田辺平学・勝田千利・・・風害の特異性並に筋違控柱の効果 同右 昭和10年1月
(9) 大阪、京都、兵庫等各県における風害調査・・・同右 昭和9年12月
其の他


posted by 忘れん坊 at 21:47 | Comment(0) |  -防災関係[通達/通知] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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